豪邸特集~和室編~
天然素材が作り出す和みの空間
畳や障子、木材の温もりを感じられ独特の落ち着いた時間が流れる場所です。今回はハウジングオペレーションアーキテクツ(HOP)が過去に手掛けた豪邸から和室を特集します。
自宅に和室を設けた理由の中で多いのが、「客間としての利用」です。普段は家事を行なうスペースの一部として使い、来客があったときに客間として使用。親戚や友人が泊まりに来たときは、寝室代わりに使用することも可能です。また近年では、茶道や書道、華道などの趣味を楽しむ部屋として活用する方も増えています。このようにさまざまな用途がある和室は、目的を明確にしてつくることが大切です。
日本のわびさびが詰まった和室は、おもてなしされる側に好印象を与えます。
居間や寝室といった、いくつもの部屋に変化できる柔軟性を持っている和室には多くのメリットがあります。
畳の素材であるイ草は繊維がスポンジのようになっているのが特徴で、保湿性や断熱性に優れ湿気を吸収する働きがあります。湿度が高くなれば湿気を吸い、低くなれば放出。森林の香りの源と言われる「フィントチッド」という成分が含まれているので、室内に居ながらでも森林浴の効果を得ることが可能です。日本は四季があるため、室内にいても乾燥や湿気が気になるところですが、保湿・断熱性に優れた和室なら心身ともに快適に過ごせます。
客間としてはもちろん、子供の遊び場や一息つきたい時など、さまざまな用途で活用できるのも和室のメリットのひとつです。洋室の場合は椅子やテーブル、ベッドなどの家具を固定で配置していることが多いですが、和室で使用する座卓や布団は上げ下げが簡単なので、普段は押入れに仕舞えます。ちょっと一休みしたいときに、すぐ横になれるのは魅力的ですね。
畳には空気が多く含まれているため、防音効果があります。また、クッション性があるので安全性が高いのもポイント。子どもが飛び跳ねて遊んでも音が外部に漏れにくく、且つ体にもやさしいので遊び場としても最適な空間だといえるでしょう。
和室の収納といえば押入れ。押入れは布団や座布団を収納するスペースなので、一般的なクローゼットと比べると奥行きがあります。そのため、収納力が高いのが大きな魅力です。布団や座布団だけではなく、季節物や衣装ケースの収納にも利用できます。
多くの人が畳は「緑色」とイメージしているのではないでしょうか?しかし、最近ではさまざまな色の畳を扱っているメーカーが増え、カラーバリエーションが豊富になっています。フローリングに合わせた畳を選ぶことも可能です。デザイン性を重視することで、今までにない和室の魅力を引き出すことができます。
和室にはメリットだけではなく、注意しておきたいデメリットもあります。
和室のデメリットとして一番に挙げられるのが、畳の手入れの大変さです。畳には細かい隙間があるため、フローリングのように掃除機をかけるだけでは十分ではありません。雑巾で乾拭きしたり、数年に一度は畳の裏表を入れ替えたりする必要があります。また、畳はすぐに染みこんでしまうため、ジュースをこぼしてしまうとシミになることも。しかし、最近ではイ草ではなく、耐久性や汚れに強い「ポリプロピレン樹脂」でできた畳も増えてきています。畳の手入れは面倒くさいと感じている人におすすめです。
和室に物を置いていて久々に動かしてみると、跡がついていたということがよくあります。畳は表面が柔らかいため、家具や重いものを長時間置くと跡がついてしまうのです。そのため、重たい物は長時間置かないよう注意してください。もし跡がついてしまった場合は、その上に絞った雑巾を置きアイロンをかけて乾燥させると跡が目立たなくなります。
一見すべて同じと思われがちな畳ですが、大きく3種類に分類されます。
もっとも多く使用されている畳です。縁があることで耐久性に優れ、使用頻度の高い自宅で選ばれます。子ども部屋として使ったり、こたつを使用したりするなどの使い勝手重視であれば、縁あり畳がおすすめです。
和モダンの雰囲気が好まれる傾向が強く、洋室にも合わせやすいことから縁なし畳が選ばれることが多くなっています。縁がないためすっきり見え、部屋が広く感じるメリットも。ただし、縁あり畳と比べると傷みやすくなっているため注意が必要です。
折り目幅が一般的な畳と異なり、各床の間に合わせたサイズで製作されます。値段は割高になっており、インテリアや趣を重視した目的で使用されるケースが多いです。
畳表(たたみおもて)とは、その名の通り畳の表側部分のことです。畳表は使用される素材の違いや、折り方によって種類が分かれます。
光沢や色合いなど、上質な仕上がりになっているのが特徴です。耐久性も高く、高品質な畳となっています。
一般的に賃貸住宅や集合住宅などで使用されている畳が、この中国表です。国産表と比べると耐久性が低く風合いも良くないですが、リーズナブルなため広く普及しています。
天然のイ草ではなく、和紙やポリプロピレンなどを原料として使用しているのが特徴です。素材によっては天然素材よりも耐久性が高い物もありますが、色味や風合いは天然素材に比べると劣ります。
和室を綺麗に保つためには、こまめな手入れが大切。ここでは、和室を構成する畳・障子・壁それぞれの手入れ方法を紹介します。
畳の掃除方法と聞くとホウキを思い浮かべるかもしれませんが、掃除機でも可能です。掃除機をかける際は畳の目に沿うことが大切。その後、乾拭きをするのがおすすめです。表面は保護膜で保護されているため、水拭きは避けましょう。
雑巾で拭くと障子紙を破いてしまうおそれがあるので、はたきを使用してホコリを落とすようにしましょう。その後、つまようじで戸と障子などの骨組み「桟(さん)」の間の汚れをかき出すのがおすすめです。
和室の壁の多くは土壁・砂壁などです。これらは水が染みこみやすくなっているため、水拭きするのはNG。普段の手入れは、はたきでホコリを払う程度にしましょう。
改めて注目されつつある和室には、メリットがたくさんあります。和室をつくるうえでこだわって欲しいのが、「質」です。国産の材料を使用していると丈夫なのはもちろんですが、和室本来の良さを感じることができます。日本古来の趣のある和室は、自宅にとって大きな役割を果たすでしょう。