アーチ壁・R垂れ壁とは
アーチ壁は、開口部(出入口)の上部を半円形に仕上げた垂れ壁の一種です。丸みのある優しい雰囲気が特徴的で、曲線や円を意味するR垂れ壁と呼ばれることも。アーチ壁の一般的な形状は半円形ですが、ほかにもセグメントアーチやカテナリーアーチ、三角垂れ壁などの種類があります。
垂れ壁とは
垂れ壁は天井から垂れ下がるように設けられた壁のことで、下がり壁とも呼ばれます。身近な垂れ壁の例としては、キッチン横のパントリーや玄関横のシューズクロークなど。垂れ壁はドアをつけずに空間をゆるやかにつなぐという役割があり、廊下とリビングの境目や収納の入り口などをゆるやかに仕切りたいときに適しています。
また、空間のアクセントとして垂れ壁を設置する人も多いようです。
アーチ壁・R垂れ壁のメリット
空間をゆるやかに区切れる
住宅のさまざまな空間をすべて壁で区切ってしまうと、圧迫感を与えて窮屈さを感じさせやすくなります。そこで活躍するのがアーチ壁・R垂れ壁です。アーチ壁・R垂れ壁を設けることで空間をゆるやかに区切れ、圧迫感を出さずに個々の空間の独立性を保つことも可能。開口部から視線を広げることもできるので、開放感のある空間を演出できます。
デザイン性が高い
柔らかな曲線を持つアーチ壁・R垂れ壁は見た目が可愛らしく、さらにアーチが空間に動きを作り出すことで、センスを感じさせる空間に仕上げてくれます。クラシックな雰囲気を持ちながらもモダンな空間との相性も良いため、壁としての機能性だけでなく、インテリアの一部としてワンランク上のデザインを楽しめるのが魅力。単調な空間にアクセントをつけたい場合にもおすすめです。
防煙効果を期待できる
アーチ壁・R垂れ壁を含む垂れ壁は、天井に向かって上昇する性質を持つ熱や煙の流れを一時的にせき止める働きがあります。もしもの火災の際に一酸化炭素や有毒ガスを含む煙の流れを遅らせることにより、避難のための時間を稼いで被害を抑えることが可能。キッチンに垂れ壁を採用するケースが多いのも、防煙効果があるためです。
建築基準法においても、天井面から50cm以上垂れ下がっている垂れ壁は「防煙壁」と定められています。その場合は設置区画や素材などに規定があるため、設計会社と相談しながら設置場所やサイズなどを検討すると良いでしょう。
アーチ壁・R垂れ壁のデメリット
設置場所によっては圧迫感が出ることもある
おしゃれな空間にしたいからといってアーチ壁・R垂れ壁をやみくもに設置してしまうのはおすすめしません。設置場所や高さによっては天井から垂れ下がった壁部分によって視線の一部が遮られ、圧迫感を与える可能性があります。また、大きい空間の中心部に存在感のあるアーチ壁・R垂れ壁を設置すると、せっかくの開放感が台無しになってしまうことも…。
空間をこもったような雰囲気にしたい場合は効果的ですが、そうでないなら空間のつながりや視線の抜け方などをしっかりとシミュレーションしながらプランニングする必要があります。
部屋を暗くしてしまう可能性がある
アーチ壁・R垂れ壁を設置することで採光を確保できず、部屋が暗くなってしまう場合があります。そのため、キッチンなどの明るくしたい空間にアーチ壁・R垂れ壁を設置するのであれば、明るさを確保できるように空間の広さやアーチ壁・R垂れ壁の配置などを慎重に検討することが重要です。
採光の確保が難しい場所にアーチ壁・R垂れ壁を設置したい場合は、照明などで部屋が明るくなるように工夫する必要があります。
組み合わせるデザインの柔軟性が高くない
優美な曲線を持つアーチ壁・R垂れ壁はおしゃれな空間を演出できる一方で、組み合わせるデザインによっては取ってつけたような印象に仕上がる可能性があります。そのため、全体のデザインとの調和も考慮しながらプランニングすることが大切です。
相性の良いデザインが限られるので、アーチ壁・R垂れ壁を効果的に取り入れるには設計者やデザイナーの手腕も重要になってきます。設計会社を探す際は、アーチ壁・R垂れ壁の施工実績が豊富かどうかにも注目すると良いでしょう。
アーチ壁・R垂れ壁がマッチする豪邸デザイン
アーチ壁・R垂れ壁との相性が良いのは、西欧建築を取り入れた洋風の住宅です。西欧建築においてアーチは伝統的なデザインで、外装や内装にアーチを描く建物が多くみられます。アーチ壁・R垂れ壁の柔らかな曲線ともよくマッチするので、全体のデザインの調和も取りやすいのがメリットです。
また、日本の伝統的な和の住宅に洋風の要素を取り入れた「和モダン住宅」との相性も◎。和テイストの重厚でクールな印象にアーチの柔らかな曲線が加わることで、デザイン性をさらにアップできます。
アーチ壁・R垂れ壁を設ける場合のポイント
全体のバランスを整える
存在感のあるアーチ壁・R垂れ壁を設ける場合、周囲のデザインとのバランスが取れていないと空間全体の調和が乱れる可能性があります。
たとえばアーチ壁・R垂れ壁の曲線の持つ「ロマンチック」「優美」といった印象とは対照的な「モダン」や「インダストリアル」といったスタイルのインテリアと混在させると、まとまりのない空間になってしまうことも。あえて異なるスタイルのインテリアを組み合わせるという手法もありますが、テクニックが必要です。
インテリアスタイルのミックスに挑戦したい場合は、インテリアデザイナーやコーディネイターといった専門家に相談することをおすすめします。
アーチ壁・R垂れ壁の仕上げにクロスを使用しない
曲線を描くアーチ壁・R垂れ壁は壁紙を密着させるのが難しく、仕上げにクロスを選ぶと経年とともに浮きやはがれが生じやすくなります。おしゃれな空間の雰囲気が台無しになってしまうため、仕上げに選ぶなら塗り壁がおすすめです。また、モールディングで装飾することでアーチ壁・R垂れ壁の華やかさがアップし、デザイン性をより高められます。
アーチ壁・R垂れ壁を設ける場所
シューズクローク
アーチ壁・R垂れ壁の設置場所として人気が高いのが、シューズクロークの出入り口です。アーチ壁・R垂れ壁は木製家具との相性も良く、玄関に曲線を取り入れることで来訪者に柔らかな印象を与えられます。
パントリー
食材やキッチン用品を収納するパントリーの出入口をアーチ壁・R垂れ壁にすることで、可愛い雰囲気に仕上がり、キッチンに立つのが楽しくなるでしょう。アーチ壁・R垂れ壁には防煙効果もあるので、火を扱うキッチン近くのパントリーは垂れ壁の設置場所として最適です。
リビング
リビングに収納スペースを設ける場合は、その出入り口にアーチ壁・R垂れ壁を設置するのもおすすめです。生活感が出やすいリビングにアーチ壁・R垂れ壁を取り入れることで、おしゃれ感のある華やかな空間に仕上げられます。
寝室
寝室の収納スペースにアーチ壁・R垂れ壁を設置する場合は、ブルーやグリーンなどの落ち着いた色味を採用するのがおすすめです。落ち着いた色味を選ぶことで眠りを妨げず、ゆっくりと休める空間を作り出せます。