デンマークの家具の魅力
デンマークの家具といえば、素材の魅力を活かした心地良いデザインが特徴的です。日本でも北欧家具は根強い人気がありますが、「華美ではないけれど、美しく満ち足りたデザイン」という点に魅力を感じている方が多いのでしょう。
デンマークの家具デザインを実現するためには、感性豊かなデザイナーと、優れた技術力をもつ職人が必要です。また、木材などの素材ひとつひとつの良さを十分に引き出し、人々が長く心地良く使えるデザインを追求することも大切。熟練の職人がぬくもりのある洗練されたデザインを活かし、豊かさの本質とは何かを教えてくれます。
デンマークの高級家具ブランド
BoConcept(ボーコンセプト)
1952に創業し70年以上の歴史をもつ、プレミアムライフスタイルブランド。60ヵ国で300以上の店舗を展開しており、日本でも人気のある高級家具ブランドです。
世界中のデザイナーとタッグを組み、北欧家具の良さとモダンな雰囲気を両立した家具をつくっているのが特徴。また、BoConceptの家具は、サイズ・カラー・素材などをカスタマイズできるのも魅力です。持ち主の個性やライフスタイルに合わせ、部屋をトータルデザインすることも可能です。
Carl Hansen&Søn(カール・ハンセン&サン)
1908年に創業した、北欧家具のトップブランド。木の温もりを感じさせるデザインと、心地よい曲線美、ミニマルなデザインが特徴です。長い歴史の中で数々の名作も生み出しており、ハンス・J・ウェグナーの名作「Yチェア」や「CH006(ダイニングテーブル)」、「CH008(コーヒーテーブル)」などが有名。
ハンス・J・ウェグナー、コーア・クリント、アルネ・ヤコブセンといった偉大なデザイナーだけではなく、新進デザイナーとタッグを組むこともあります。モダンスペースに似合うシンプルさ・機能性・クラフトマンシップなどを大切にしたデザインは、世界中から愛されています。
eilersen(アイラーセン)
1895年に創業した、デンマークのソファブランド。デンマーク人はソファに対する思い入れが強く、eilersenはソファブランドの代名詞といえる存在です。
創業当時は馬車の製造を行っており、座り心地や強度の追求には長い歴史があります。1世紀以上に渡って追求された優れた快適性は、家で長い時間を過ごすデンマーク人にとって欠かせないもの。また、落ち着いた色味と飽きの来ないデザインも魅力的であり、「ストリームラインソファ」は日本でも人気の高い製品です。
FREDERICIA(フレデリシア)
1911年にソファメーカーとして創業したFREDERICIA。1955年には後に北欧デザインの巨匠となるボーエ・モーエンセンをデザイナーに起用し、モダニズムの理想を形にした家具を生み出してきました。たとえば「スパニッシュチェア」や「シェーカーチェア」は、FREDERICIAを代表する名作。
クラシックなデザインが多くありますが、若手デザイナーによるモダンな作品も登場しています。
FRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン)
FRITZ HANSENは、日本において最も知名度のあるデンマーク家具ブランドといえるでしょう。
創業は1872年。家具製造会社として品質水準にこだわった家具を作り続け、確固たる評価を受けます。そして、アルネ・ヤコブセンやハンス・J・ウェグナーといった一流デザイナーとのコラボレーションに成功。
たとえばハンス・J・ウェグナーによる「チャイナチェア」、ボーエ・モーエンセンによる「スポークバックソファ」、アルネ・ヤコブセンによる「エッグチェア」や「スワンチェア」などが有名です。
HAY
2002年に設立した、現代的なインテリアプロダクトブランドです。洗練されたモダンなデザインが魅力的であり、クラシックでありながらも現代に合った機能性の高いデザインが特徴。東京にも店舗があり、日本でもファンが増え続けています。
歴史が浅いながらも数々の傑作を生み出してきたHAY。なかでもルイーズ・キャンベルがデザインした「プリンスチェア」は有名で、MoMA(ニューヨーク近代美術館)にも永久コレクションされています。
Muuto(ムート)
2006年に創立されたファニチャーブランド。現在では北欧を代表するデザインブランドへと成長しています。
デザイナーには、最前線で活躍する北欧デザイナーを起用。シンプル・ナチュラル・高い機能性というスカンジナビアデザインをベースとした家具をつくっています。
伝統的な北欧デザインを尊重しつつも、大胆な発想や素材使いが特徴的。数ある北欧家具ブランドのなかでも、ユニークなデザインの家具が多い印象です。
Onecollection(ワンコレクション)
1990年の設立当初は、ハンセン&ソーレンセンとして家具の製造・販売を行っていました。ヘリック・テングラーの「チェアマンチェア」コレクションなどを発表して成功を収めたのち、デンマーク家具の代表的デザイナー「フィン・ユール」の家具ライセンスを取得。フィン・ユールのほとんどの作品のライセンスを保有し、「ペリカンチェア」の復刻量産化も成し遂げています。
フィン・ユールの作品は特徴的な曲線フォルムによって量産化が難しいとされていましたから、Onecollectionの技術力とアイデアが優れていることがわかります。
PP Mobler(ピーピー モブラー)
PP Moblerの始まりは1953年。創業当初は小さな工房でしたが、トップクラスの人気を誇るデンマーク家具ブランドへと成長しました。
成功の理由は、PP Moblerの高い生産技術と北欧家具デザインの巨匠ハンス・J・ウェグナーが出会ったことにあります。たとえば、「The Chair」(ザ・チェア)や「PP19」(ベアチェア)、「PP550」(ピーコック・チェア)が有名。
現在でも製造の全工程を自社工房で行い、職人の優れた手仕事でクオリティの高い家具を生み出しています。
デンマークの家具の歴史を学ぶ
デンマークの家具の歴史を、「黄金期」「衰退期」「現代」に分けて紹介します。
黄金期(1940年代初め〜1960年代)
デンマーク家具黄金期の礎を築いたのは、コーア・クリント。建築家であり家具デザイナーでもあるコーア・クリントは、1942年から亡くなる54年までデンマーク王立芸術アカデミー家具科の教師として後進を育成しました。
1940年代には、ヨーロッパを中心にモダニズム運動が行われていました、モダニズム運動では合理主義と機能主義が掲げられ、工業的な大量生産を前提とした考えが広まっていきます。デンマークもその考えに影響され、木材や伝統的なクラフトマンシップを維持しつつも、デザインを一般市民へ開放。コーア・クリントは過去の伝統の調査分析や研究を行い、新たにデザインし直す方法論を確立しました。
キャビネットメーカーズギルドによる展覧会
1940年代初め~1960年代が黄金期と呼ばれるようになった要因のひとつに、キャビネットメーカーズギルドによる展覧会があります。
キャビネットメーカーズビルドとは家具職人組合のことであり、顧客販売窓口や品質管理、若手職人の育成などを担っていました。展覧会では、高級木材を使った高品質な家具を消費者に向けてアピールしました。家具デザイナーや家具職人が協力し、数々の名作を生み出しています。
黄金期には、生活協同組合の家具部門であるFDBモブラーも誕生しました。「丈夫で、美しく、機能的、そして手頃な価格」という開発条件のもと、一般市民に向けた良質な家具を生み出しています。
衰退期(1970年代初め〜1980年代)
1970年代に入ると、デンマークのモダン家具デザインの勢いは衰え始めます。黄金期にデンマークモダン家具への注目が集まったことから、海外からの需要が増え、殺到するオーダーの対応に追われてしまったことが原因。当時の家具工房は決して大規模とはいえませんでしたから、対応に追われて新作をつくる余裕がなくなってしまったのです。
黄金期に活躍した家具職人の高齢化が進んだことも原因のひとつといわれています。高い木工技術をもつ家具職人が減少し、後継者の育成が追いつかないまま廃業に追い込まれることもありました。さらに、アルネ・ヤコブセン、オーレ・ヴァンシャー、フィン・ユールといった家具デザイナーや建築家も高齢になり、他界してしまいました。
現代
1980年代に衰退したデンマークモダン家具デザインですが、日本では1990年代中頃から再評価されるようになりました。現在でも北欧デザインは人気を博しており、インテリアデザインのジャンルのひとつになっています。
当記事で紹介したデンマーク家具ブランドHAYやmuuto(ムート)は、2000年代に誕生したブランド。まだ歴史は浅いものの、注目の家具ブランドです。北欧デザインの中核であるデンマーク家具は、今後も根強い人気を誇っていくでしょう。