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豪邸を建てるとは HOP 石出和博の想い 本物は古くならずに深くなる

住み手と作り手の思いが重なって初めて生まれる一軒の豪邸。東大寺のような日本の社寺建築にも通じる美意識と耐久性を持ち、50年後には町の文化遺産にもなり得る住宅作りを信条とする石出和博氏に、「豪邸を建てる意味」、「家を建てる意味」を聞きました。

豪邸を建てるとは ~HOP 石出和博の想い~

家を建てるとは
人生最大の遊びである

―――そもそも家を建てるという行為を、どのようにお考えですか?

石出:常々言っている言葉ですが、「家づくりは人生最大の遊び」だと思います。

―――遊びですか。

「遊び」と言うと、大きな予算を用意して住宅建設に臨む施主の中には、「何をふざけたことを」と憤りを感じる方も居るかもしれません。しかし、家づくりとは人生そのものですし、家には施主の人生観が全て表れます。にもかかわらず、家を建てて満足している人は、全体の3割しか存在しないとも言われているのです。

―――3割しか居ないのですか。

その通りです。与えられた大量生産の住宅を何も言わずに受け入れている限り、満足度は高まりません。自分の理想を妥協せずに家づくりに注ぎ込んで、住宅にわびやさびの美意識、粋な遊び心を取り入れる。そうした作り手の思いが大前提にないと、満足のいく住宅は完成しないと思います。住宅作りは人生の集大成であり、喜びでもあり、遊び心を形にする人生最大の道楽でもあるのだと思います。

日本の家は年月とともに味わいを深める

―――なぜ、人生で最も高い買い物と言われる住宅を手に入れても、3割の人しか満足できない状況になっているのでしょうか?

戦後に家を大量生産した考え方が間違っていたのだと思います。戦後の経済至上主義は効率が最優先され、その影響で、建築の世界でも日本の職人が守ってきた伝統技法が失われてきました。
日本の伝統技法や美意識を欠いたまま大量生産された家は、やはり愛着を持てません。愛着を持てない家にどれだけ住んでも、満足はなかなか感じられないのだと思います。

―――失われつつある伝統技法や美意識とはどういったものでしょうか?

日本にはもともと法隆寺のように、1000年経っても通用する設計・施工の文化財がありました。自然に近い木造の建造物で、年月を増していくとともに、味わいや趣が出てくる建物です。
今は新築時に奇麗で新しいだけ、時間が経てば古びてしまう大量生産の住宅が増えました。古くなったときの「使い捨て」を前提としているような家が目立ちます。
その意味では住み手だけでなく、作り手の側も、「100年経っても残したい」、「時を経ても古くならずに、深くなる住宅を作りたい」と気持ちを込めて作らなければ、本物の美しい家は生まれないと思います。

本物は古くならず、深くなり、そして街並に変わる

―――古くならずに深くなる。この言葉は石出さんの志向する家づくりの根幹にある哲学だと思うのですが、こうした家づくりを目指すようになったきっかけはあるのでしょうか。

法隆寺や薬師寺の再建を手掛けた宮大工の棟梁、故西岡常一さんと生前に、交流させていただく機会に恵まれました。西岡さんには、「あなたが今造っているものが、50年も経ったらその町の文化になる。そういうものを造らなければいけない。お金をかけることよりも、本物の素材をうまく生かせば美しいものは造れる」という金言をいただきました。

―――50年も経ったらその町の文化になる、素敵な言葉ですね。

本物の素材を使って、後世に長く残る美しいものを作る。そのためには図面だけで家を作るのではなく、職人の力を大切にし、優れた木材をそろえる必要があると気づかせてもらいました。
そこでわが社に籍を置いていた大工さんたちには西岡常一さんの下に弟子入りさせていただき、一方で建材確保のために、山の人と建築会社が一緒になって国産材を利用する組合を日本で初めて作りました。
優れた国産材と、日本の職人が守ってきた伝統技法を持って、後世に文化遺産として引き継がれるような、街並みのシンボルにもなり得る本物の住宅を真剣勝負で作り上げていきたいと思います。

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