音漏れを防ぐ防音室の仕組み
音は何かに振動することで伝わる性質を持っており、それを逆手に取った仕組みで音漏れを防いでいるのが防音室です。
要は外部に振動が伝わらないようにすれば良いので、防音室には音を吸収する「吸音材」と音を遮断する「遮音材」の2つの素材が使われています。吸音材と遮音材はそれぞれ違う材質からできており、吸音材は音を吸収しやすいグラスウールのような柔らかな材質、遮音材は音を跳ね返すために石膏ボードなどの固い材質を使っているのが特徴です。
目的に合った防音室をつくるためには、吸音材と遮音材をバランス良く組み合わせることが重要になります。
遮音等級について
どの程度の防音対策が必要かどうかは、防音室を設置する用途や住まいの環境によっても変わってきます。必要な防音対策を確認するために、音の大きさを示すデシベルと音をどれだけ遮断できるかを示す遮音等級についてしっかりと把握しておきましょう。
音の大きさを示すデシベルとは
デシベル(dB)は音の強さや電波の強さを表す単位のことで、デシベルが大きいほど周囲に音が響いていることになります。どこから騒音と感じるかは人それぞれですが、一般的にうるさいと感じるのは50デシベル以上からとのこと。身近な生活音で言うと、50デシベルに該当するのは静かな公園や室内、クーラー(屋外機・始動時)の音、換気扇の音などです。
また、楽器の演奏については、ギターが80dB、管楽器は90dB、アマチュアが弾くピアノについては100dBとなります。
遮音性能を示す遮音等級とは
遮音等級は家や部屋の遮音性能を数値化したもので、D値またはDr値で表されます。D値とDr値は会社によってどちらで表記するかが変わるだけで、意味は同じです。たとえば、60デシベルの音を遮断する遮音性能を表す場合、D-60もしくはDr-60と表記されます。
必要な遮音性能について考える際の例を見てみましょう。防音室で90デシベルの音を発生させる場合、一般的に音が気にならないとされるレベルの40デシベルまで下げるには、90デシベルから40デシベルを差し引いた50デシベルの音を遮音するD-50またはDr-50の遮音等級が必要です。
遮音等級は、建物が持つ遮音性能と防音室の遮音性能を組み合わせて考えます。たとえばD-20~25の遮音性能を持つ家に、防音室を設置してD-50の防音能力を持たせたい場合、防音室に必要な遮音性能はD-25~30です。家の外に音が漏れないようにするには、建物自体の遮音性能の防音室の遮音性能を組み合わせて、必要な防音対策を確認しましょう。
用途別に見る防音室の設置費用
ピアノ演奏・ホームシアター用の防音室
- 12畳(完成後の広さ約10.8畳):354万円~
- 10畳(完成後の広さ約8.9畳):317万円~
- 8畳(完成後の広さ約7畳):289万円~
- 6畳(完成後の広さ約5.2畳):256万円~
- 4.5畳(完成後の広さ約3.8畳):233万円~
※D-60~D-65の遮音等級(ほとんど聞こえない・通常では聞こえない)の防音室の費用相場
管楽器用の防音室
- 12畳(完成後の広さ約9.8畳):432万円~
- 10畳(完成後の広さ約8畳):389万円~
- 8畳(完成後の広さ約6.2畳):355万円~
- 6畳(完成後の広さ約4.4畳):316万円~
- 4.5畳(完成後の広さ約3.2畳):286万円~
※D-60~D-65の遮音等級(かすかに聞こえる・ほとんど聞こえない)の防音室の費用相場
打楽器用の防音室
- 12畳(完成後の広さ約8.8畳):770万円~
- 10畳(完成後の広さ約7畳):696万円~
- 8畳(完成後の広さ約5.4畳):630万円~
- 6畳(完成後の広さ約3.7畳):565万円~
※D-75~D-80の遮音等級(小さく聞こえる・かすかに聞こえる)の防音室の費用相場
オーダーメイドで防音室をつくるメリット
広さや天井の高さなど柔軟に設計できる
既成住宅で防音室をつくるとなると、狭い部屋や広い部屋のデッドスペースを活用するのは難しいのが現状です。オーダーメイドであれば広さの自由度が高く、さらに変形地や梁・柱のある部屋なども防音室として利用できるメリットがあります。戸建ての最上階でよくある斜めに傾いた天井やダクトで一部凹んでいる天井なども、オーダーメイドなら柔軟に対応可能です。
防音性能や音響特性などにこだわれる
せっかく防音室をつくるなら、防音性能や音響特性にはこだわりたいもの。オーダーメイドなら、隣の家に近い外壁に防音性能の高い素材を使ったり、上の階の寝室に音漏れしないように天井の防音性能を高めたり、と必要な性能をピンポイントで組み合わせられるのが魅力。防音工事に強い会社なら、防音室の使用用途や楽器などが変わったときに、音響特性を変更することも可能です。
自由度の高いデザインでこだわりをカタチにできる
自由度の高いデザインを叶えられるのもオーダーメイドの魅力なので、趣味をとことん楽しめる設計で居心地の良い環境にしたい方にもおすすめ。また、家全体のデザインが防音室の存在で損なわれないように、内装の仕上げやカラーリングなどを既存のテーマに合わせて設計することも可能。自分だけのこだわりがつまった、まさに大人の隠れ家と呼べる部屋を実現できます。
防音室をつくるときの注意点は?
用途を明確にしたうえで広さを決める
防音室をつくる場合、もともとの部屋よりスペースが狭くなるため、楽器やホームシアターの設備などの置き場所を確保できるか事前に確認しておきましょう。完成後の広さを考慮しないまま設計してしまうと、必要な設備を配置できず、デッドスペースになりかねません。そのため、施工会社と相談しながら、用途に合った広さの設計にすることが重要です。
ドアや換気システムなどに音漏れ対策が必要
ドアや窓、換気システムなどは快適な住環境を叶えるのに欠かせない要素ですが、隙間から音漏れする可能性があります。そのため、防音室をつくるときは、音漏れしないための対策が必要です。たとえば、ドアや窓の隙間をゴムパッキンでふさいだり、エアコンの配管穴の部分をパテで防いだり、といった方法が考えられます。ゴムパッキンを使用する場合は、定期的な交換が必要です。
施工会社によっては防音室用のオリジナル製品を用意しているところもありますが、隙間ができない構造になっているか、ゴム部分の定期的なメンテナンスは行なわれるか、などを確認しておきましょう。
防音室をつくるときのポイント
満足いく防音室をつくるためには、使用する目的や住まいの環境などに合った素材選びや設計がカギとなってきます。
「防音室を何に使いたいのか」「目的に合った広さを確保できるか」「音漏れしないために必要な対策は何か」などを考え、施工会社とも相談しながら詳細を決めていきましょう。防音室の設置が予算や家族の意見などで難しい場合は、コンパクトな防音ブースを検討してみるのも良いかもしれません。
どちらにしても、最適なアドバイスをくれる施工会社の存在も重要になってくるため、防音室の設計に強い会社かどうかも施工会社を選ぶ際のポイントにしましょう。