ウォールナットとは

建築業界やインテリア業界において「ウォールナット」は世界三大銘木の一つに数えられる木材であり、日本語では「クルミ」と訳されますが、一般的には北米を主産地とする落葉広葉樹の「ブラックウォールナット/アメリカンウォールナット(アメリカンブラックウォールナット)」を指します。そのため、ナチュラルで明るい色合いの国産クルミ材とは異なり、ウォールナットは温かみを感じられる深い焦げ茶色の風合いが特徴です。
ウォールナット材は美しい色調と木肌を持ち、ヨーロッパなどでは王侯貴族のための調度品や高級家具に利用されてきた歴史があります。また、現代においてもウォールナットは世界各国のセレブリティに愛される木材であり、重厚さと気品を感じさせる家具は高級品として豪邸にも相応しい逸品と言えるでしょう。
ウォールナットの魅力
重厚感のあるウォールナットならではの色合い
ウォールナットは独特の風合いを持つ深い焦げ茶色の木目と木肌が魅力であり、その落ち着いた温かみを感じさせる雰囲気は、品格を重視する貴族の調度品に相応しい品質を持っています。
ウォールナットの特別な点は、単なる焦げ茶色ではなく、紫色を帯びた複雑な色合いにあります。辺材は白っぽい薄さを持っていながら、中心に近づくにつれて濃くなり、魅力的なマーブル模様を形成します。
墨流しと呼ばれる美しい木目
ウォールナットの木目はすらりと真っ直ぐに整っていることが特徴です。これはウォールナットの木が天に向かって真っ直ぐに成長する特性によるもので、日本ではその流れるような木目を「墨流し」と呼んでいます。
ただ真っ直ぐというだけでなく、部分的に巻毛状や波状の木目が気まぐれのように現れ、それが真っ直ぐな木目のアクセントとして優雅さを強めています。
ウォールナットの木目をどのように家具や建物に取り入れるかは、職人やデザイナーの腕の見せ所となります。
経年変化によってまろやかな色合いに変わる

ウォールナットの特徴的な色は、家具や建材として使用された後、時間が経つにつれて徐々に変化していきます。
経年変化によってまろやかな色合いに落ち着いていくウォールナットの外観は、時間の流れと共に家具や家そのものが成長し、空間の一部として深く溶け合っていくような雰囲気を醸し出します。その美しさは一朝一夕には叶えられるものではありません。
アンティーク家具などでウォールナットが使用されているものは、状態や品質によっては市場で驚くような価格で取引されることもあります。
耐久性・耐衝撃性に優れている
ウォールナットの魅力として、耐衝撃性に優れ、割れたり欠けたりしにくい点も見逃せません。そのためウォールナットはライフル銃の銃床としても使用されます。
またウォールナットの安定した品質はフローリング材としても優れており、滑らかで劣化することなく住民の生活を支えるウォールナットの床はまさに世代を超える豪邸の建材として相応しいと言えるでしょう。もちろん家具材としても丈夫であり、古いウォールナットの家具が高級アンティークとして扱われることも珍しくありません。
狂いが少なく、加工しやすい
真っ直ぐな木目が特徴のウォールナットは、木目だけでなく木材としての狂いが少なく、家具や建材として加工しやすいことも魅力です。
またウォールナットの表面は滑らかで触り心地も良く、デザイナーや職人にとって加工しやすく、仕上げの品質も追求しやすい点が重要です。
このような特徴からウォールナットはさまざまな家具に使用することができます。
温度・湿度の影響を受けづらい
衝撃に対して頑丈であるだけでなく、ウォールナットは湿度や温度による影響を受けにくい点も特徴です。一般の無垢材は湿度や温度の変化によって収縮したり変形したりすることがありますが、ウォールナットの場合はそのような影響を受けにくいため、高温多湿の地域でも常に一定の品質を保ちやすい木材となります。
そのため、ウォールナットの高級家具はまさに高温多湿な日本の豪邸にも相応しいと言えるでしょう。
ウォールナットの歴史
一般的にウォールナットが高級木材として利用されるようになったのは、17世紀後半のイギリスとされています。高級感があり、実用性にも優れたウォールナットの特性は王侯貴族に高く評価され、家具製作の技術を競い合う家具職人にとっても魅力的な素材として流行しました。
また、ウォールナットは富の象徴として高級家具の代名詞となり、ウォールナット材を活用したテーブルやチェア、キャビネットなどさまざまな家具が製作されました。
なお、この頃に製造されたウォールナットのアンティーク家具は、時代を超えて受け継がれた富の象徴として、現在でも国内外のマーケットで高値で売買されています。
ウォールナットの種類
一般的にウォールナットは北米大陸を原産地とするブラックウォールナット/アメリカンウォールナットとして知られていますが、実は産地によってウォールナットにも複数の種類があります。
ここではウォールナットの種類をまとめていますので参考にしてください。
アメリカンブラックウォールナット
ウォールナットといえば、まず「ブラックウォールナット/アメリカンウォールナット」、もしくは「アメリカンブラックウォールナット」が挙げられるでしょう。
カナダやアメリカの北東部といった北米大陸を産地とするウォールナットであり、工芸品や高級家具などに広く使用されてきました。
辺材と心材で変化する美しい色合いのコントラストが魅力であり、両者の境目が比較的明瞭であることが特徴です。また繊細で緻密な木目には気品が感じられ、耐衝撃性や耐久性に優れており、アメリカンブラックウォールナットを使ったアンティーク家具は現在でも人気を集めています。
オレゴンウォールナット
アメリカンブラックウォールナットの中でも、特にオレゴン州を産地とするウォールナットを「オレゴンウォールナット」と呼びます。
アメリカの西海岸に位置するオレゴンは自然に恵まれたエリアであり、その地域のみで産出されるオレゴンウォールナットは希少性の高さから木材として一層の高級素材となっていることが特徴です。そのためオレゴンウォールナットの一枚板を使って製作されたテーブルなどは市場で高値を付けることも珍しくありません。また、高樹齢の木が多く、オレゴンウォールナットは存在感と重厚感にこだわりたい愛好家におすすめです。
ヨーロピアンウォールナット
文字通りヨーロッパを産地とするウォールナットが「ヨーロピアンウォールナット」です。
またヨーロピアンウォールナットは中東やトルコ、中国といったエリアでも分布しており、イングリッシュウォールナットという名前で呼ばれることもあります。ヨーロピアンウォールナットはユーラシア大陸に広く分布しており、その実はクルミの実として食用されていることも特徴です。
ヨーロピアンウォールナットは一般的な木材より強度や耐久性に優れており、手作業でも加工しやすいことから多くの建物や家具に広く利用されてきました。
クラロウォールナット
アメリカンブラックウォールナットにヨーロピアンウォールナットを接ぎ木して作られた人工的なウォールナットです。幼木の頃に接ぎ木されることで、自然のウォールナットとは異なる雰囲気や特徴を持つようになります。
ウォールナットの中でも樹高は低めで幹もあまり太くならず、成長がゆっくりという特徴があります。そのためクラロウォールナットを家具や建材として使用するには長い年月を待たなければなりません。
辺材は黄褐色、心材は赤褐色で、独特の深い色合いが魅力です。また接ぎ木の影響により複雑な木目が生まれることもあります。
バストゥーンウォールナット
クラロウォールナットがアメリカンブラックウォールナットと自然交配して誕生した木が「バストゥーンウォールナット」です。
自然に生まれたウォールナットが、人の手によってクラロウォールナットとなり、それがまた自然な営みによってバストゥーンウォールナットとして誕生するため、バストゥーンウォールナットが建材や家具材として流通するには多くの過程と長い年月を必要とします。
流通量が少なく希少なウォールナットであり、明瞭な黒のラインや独特で複雑な木目は芸術的な価値を持ち、多くのファンを獲得しています。
ウォールナット以外の世界三大銘木
マホガニー

マホガニーはセンダン科マホガニー属の植物であり、柔らかく加工性にも優れた高級木材です。自院の彫刻や宮殿の装飾、豪華客船の飾りなどに使用されてきた歴史があります。ウォールナットと同様に世界三大銘木の一つとして知られており、違法な伐採によって数が減少しているため、現在はワシントン条約で保護されています。そのため、マホガニーの取引には公的な証明書が必要となります。
チーク

木目が美しいチークもまた、ウォールナットやマホガニーと並んで世界三大銘木の一つです。オリエント急行やクイーンエリザベス2号といった世界的に有名な乗り物の内装や装飾にも使用されてきました。耐水性や耐久性に優れており、木目も美しいチークは高級木材として人気ですが、現在は伐採禁止となっている地域が多く、輸出入についても厳しい制限を受けています。